高杉の「つまらん」理由 敏三郎と『志』

                                         

第9話「高杉晋作、参上」その1 からの続きです。

寅次郎が高杉晋作に問いかけます。

「メリケンがエゲレスから独立を勝ち取った時、
 百姓も商人も、船乗りも、医者も・・
 身分に関わりなく鉄砲を持って戦いました。
 君は、そのことについて、どう考えますか ?」

「百姓、商人、医者風情が集まるだけでは 烏合の衆にすぎん。
 束ねる者、政をする者がいる。 それこそ武士の務め」

高杉の答えに久坂玄瑞が食ってかかります。

「ならば、お前は武士の務めを果たしとるんか !?」

寅次郎は久坂をそっと制した。

 


 

お前の人生がつまらんのは、お前がつまらんからじゃ!

意外なことに、高杉は静かに言います。

「それがのう・・どうも、つまらんでのう」al_020

「つまらんじゃと !?」と久坂。

「のう久坂・・
 俺は、何か気の病かもしれん・・
 人生が、つまらんで、つまらんで仕方がない。 

 俺の進む道はもう決まっとる・・・
 それを誇りにも思うとる・・・

 じゃが、何かが足りんのじゃ。
 自分の行く末を思うと、
 退屈で退屈で、いっそ死にとうなるんじゃ。 

 ここに来たんも、ただの暇つぶしじゃ」

そう言う高杉に久坂は自分の『』をぶつける。

「ふざけんな。暇つぶしで来るんなら今すぐ帰れ! 
 ここはお前が来るところじゃない!

 俺は思うとる。
 誰にばかにされようと、
 笑われようと、本気で思うとる。

 この松本村から、この国を変えようと・・
 武士でない自分にもできることがあると・・

 このお方がそう思わせてくれた! 

 そう思えてから、ここで学ぶんが、
 楽しゅうて、楽しゅうて、仕方がない。

 ここにおる皆もきっと同じじゃ。

 お前の人生がつまらんのは、お前がつまらんからじゃ!

 


 

君の『志』は何ですか ?

高杉は、もう何も言えなかった。
静かに久坂の話を聞いている高杉に
寅次郎が問いました。Print

「高杉君。君の『』は何ですか ?

今回の第9話冒頭で、
自分の可能性に迷っている久坂に
寅次郎は、同じ問いをしています。

「僕の『』は、この国を良くすることです。

 『志』があれば、罪人でも生きるんは楽しい。
 やる気が、尽きることはない。

 『志』を立てることは、すべての源です。

「君がもし、この小さな萩の御城下で、
 由緒ある武家の跡取りとして、人生を考えとるなら、
 君にとってそれはつまらんことでしょう・・
 君はそれを望んじゃおらんのだから。

『志』は、誰も与えてくれません。
 君自身が見つけ、それを掲げるしかない。
 君は、何を志しますか?

高杉は、黙ってその場を去りました。

10代後半の、自分の人生について
もがき苦しんでいる若者にとって、
寅次郎の言葉は、
嵐の中にやっと見えた灯台の光のように
感じられたことでしょう。

一方的に指示したり、
答えを示すのではなく、
自分の頭で考えて行動できるように導く

それが教育の根幹であり、
人を育てる」秘訣なのでしょう。

 

 

敏三郎の成長

ある日、杉家で、家計の銭入れが失くなり
大騒ぎになります。

そんな時に、塾生から
色街の近くで高杉と一緒だったという
敏三郎の目撃情報を聞きます。

それを知った文は、
慌てて色街の茶屋へ乗り込みます。

敏三郎を見つけると
敏三郎の前には、銭入れがありました。

atoshisaburou文は、敏三郎を叱りますが、
実は、その金を元手に
塾のために稼ごうとしていたのでした。

強い男になりたい・・
戦になったら戦える男になりたいと・・
敏三郎の方から高杉に会いに来たこと
聾唖者で仕事の口もないため
本を買って敏三郎の得意の写本で
稼ごうとしていたことを
高杉の口から聞かされ、
敏三郎の悩みも思いも理解していないことに
気付かされる文でした。

お前の弟を守られるだけの身にすんな !
 姉が好きだから、こいつは苦しいんじゃ !
 あんたの望む可愛い弟を演じることが苦しいんじゃ !

高杉は敏三郎の気持ちの代弁するとともに
それは、高杉自身の心の叫びでした。

敏三郎と高杉の苦しみは、まったく一緒でした。

高杉を大切にしてくれる
親の思いがわかるからこそ苦しいのです。
親の望む良い息子を演じるているのが
苦しくて、虚しくて、つまらんのでした。

敏三郎は、もう・・男じゃ !
 自分の頭で国のために家のために
 役立つことを考えとる
 
 お前の兄上の言葉を借りりゃ
 』を持つ立派な男じゃ !

そんな敏三郎
それまでの自分から懸命に脱皮しようとする姿に
高杉は、自分自身に重ね合わせ
高杉自身も決心するのでした。

 

高杉晋作 松下村塾に入門

Printある日の夜、高杉は父・小忠太の書斎を訪ねた。

父上はいっつも私を大事にしてくださる。
 守ってくださる。感謝しております。
 尊敬いたしております。

 しかし・・
 今まで誰も私の目を開かせてくれんかった。
 父上も、おじい様も、

 侍の死に様を見てさえも、
 誰もこの退屈から私を救うてくれんかった。

 初めて出会うたんかもしれません。
 あの男たちといれば・・
 いずれ私も・・『』とやらを持てるかもしれません。

 失礼いたします」

高杉は、父・小忠太を背に、
夜だというのに、松陰先生に会いに
松下村塾に向かい走りました。

正座して書物を読んでいた寅次郎は、
突然、飛び込んできた高杉に驚きます。

高杉が叫びます。

「学問がしたい !!」

「何のために !?」

「分からん !!
 じゃが、面白そうなにおいがする」

「ふっ・・はっはっ・・そうですか。
 ならば、共に学びましょう」

「その前に、ひとつだけ言うておく・・。
 俺が本気で学んだら、久坂など相手にもならん」

「さあ、それはどうかな?」

寅次郎の言葉に笑う高杉。

 


 

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