二十一回猛士 野山獄と高須久子との別れ

                                         

第7話「放たれる寅」その3 の続きです。

句会の晩、寅次郎は夢を見ます。
闇の中を何かに追われて走っています。

前に光が見えた瞬間、
光がはじけ、寅次郎に襲いかかり、
光は、今度は「二十一回」という文字となり、寅次郎の開いた両手の上に浮かびます。

「二十一・・・・」

目が覚めて、そう呟き、寅次郎が中庭に出ると、
高須久子が井戸端で洗った髪をすいていました。

 


 

高須久子との別れ

a044278人の気配に驚き、ちょっと恥じらい
立ち上がろうとする久子を
寅次郎は手で制し、言いました。

「句会に形を借りて私を送り出そうとしてくれた。
 ありがとうあんした。」

「私は何もしておりません」

と久子が言うも

「富永様からすべて伺いました」

と寅次郎。

それから、水を飲んでから
寅次郎は、「二十一回」の夢の話を
久子に説明をして考え込みます。

「不思議な方ですね。あなたは・・」

吹き出す久子。

「笑わんでつかーさい。私は真剣なんですから・・」

と困り顔の寅次郎。

「すいません」と笑う久子

「ここを出たら皆さんの出獄を嘆願するつもりです。
 また皆さんにお目にかかりたいんです。
 句を詠み、書物を回し、議論を重ね・・」

寅次郎の言葉を遮り、久子が言います。

「わたくしは議論などいたしませんよ」

気落ちした表情になる寅次郎に
久子は笑いながら続けます。

「お別れの前にひとつだけ、
 お願い事をしてもよろしいでしょうか?」

 


 

放たれる寅

高須久子の願いとは、最後に文に会いたいということでした。

a065180野山獄に来た文と向かい合うと
久子は、お手玉を2つ取り出します。

「獄に入る前、娘と最後に遊んだのが
 お手玉でした。
 あなたが会わせてくれました。糸と私を」

「でも、人というのは、
 身勝手で少し悲しい生き物です。

 だから出会いというのも、
 すべてが幸せとは限りません。」

久子が続けて言うと、ちょっと考えて、文は笑います。

「私はただ、分かち合いたいんです。私も誰かと。
 兄上と獄の皆様のように、
 学問や嬉しいことや苦しいことや・・。
 だから怖くはありません」

久子は言います。

分かち合う。そういう場所があったら楽しいでしょうね。
 にぎやかな市のような・・優れた学問所のような

うなづく文。

それが松下村塾だと連想してしまう私たちドラマの視聴者。

「また、会いに来てもいいですか? 
 また参ります。」

文は頭を下げると久子は微笑みました。

 

そして、寅次郎は
手にしたボタオを握りしめ、房を出ます。

獄囚達は無言で、つかんだ格子を一斉にカタカタと鳴らします。
富永も無言で、杖を叩き続けます。

それが寅次郎の野山獄の卒業に対する
惜別の言葉のように胸に響きました。

寅次郎は深々と一礼して野山獄を去りました。

 

 

二十一回猛士

獄から出ると、そこには文が迎えに来ていました。

寅次郎が野山獄を出て歩き出そうとすると
今度は伊之助が立っていることに気が付きます。

二人は互いに駆け寄りました。

「これからどうする ?」と伊之助。

「本も読みたい、意見も述べたい、
 魂はどこへでも行ける。
 蟄居なんぞ何の妨げにもならん」

と寅次郎。

「脱藩し、建白書を送り、密航を企て、
 それでもまだ懲りんのか」

伊之助が笑う。

「むやみに猛々しいふるまいはおやめください!」

と、思わず言う文。

「いいや、やる。私はやる・・・。二十一回やる」

simajirou瞳はキラキラさせながら
いたずら小僧のように寅次郎が言います。

「猛々しいことをか ?」

伊之助が笑いながら尋ねると、
寅次郎は頷きます。

「すでに3つ成したから、あとは18回じゃ!」

歩き出す寅次郎を文が追いかけます。

「待ってつかーさい、兄上!」

伊之助は立ち止まったまま、そんな二人の姿を見つめています。

二十一回猛士か。どこまでも行くがいい」

伊之助は、呟きました。

 

久子にも寅次郎が説明してましたが

」の字は、「十一」と「」と「回=」に分解でき、
「杉=」の字も「十八」と「」に分解でき、
どちらも足すと「二十一」となります。

また、寅次郎の「寅」は「猛虎」を連想できますので、
これらを組み合わせ、『二十一回の「猛」を行う「士」』思いを込め
二十一回猛士』を吉田松陰は「」としました。

「猛士」は、たぶん『孟子』もかけていると個人的には思っています。

 


 

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