坂本龍馬と「フレーヘード」 そして「一粒の籾」

                                         

第18話「龍馬 ! 登場」その1 からの続きです。

小田村伊之助と久坂玄瑞の思いは届かず、
長井雅楽の『航海遠略策』は
正式に長州藩藩是として採用されることになります。

心配して集まって来た塾生たちに
久坂は言います。

今ならようわかる。
先生の言う『草莽崛起

ここにおる草莽の志士たちが、
この国を変える。

保身に走る幕府の役人なんぞ、
もはや当てにはせん。

無能な公家も諸大名も省みるに値せん。

藩の決定も、大事の前ではもはや小事じゃ!
この国を変える。変えてみせる !!

 


 

松下村塾再開

そんな中、松下村塾は再開します。

久坂をはじめとする塾生たちは
恩師・吉田松陰の『講孟余話』の
写本を作っていました。

江戸や京へ馳せ参じたり
同士が命を落としたら
『志』を讃える墓を建てるために
この写本を売り軍資金を貯るのだと
文は久坂から聞かされます。

それを聞いた文は、
ふくれっ面で、その場を去ります。

 


 

すれ違う久坂と文

文を気遣い追って来た久坂に
松下村塾はそんなことをする場所ではない
松陰はどう思われるか・・と
文は言います。

(たぶん、松陰先生は喜ばれるでしょうね)

「お前は武士の妻じゃ ! 気をしっかり持て !!」

(ごもっとも・・!! )

「あなたという夫の妻でもあります

望んではいけんのですか?
あなたに無事でいて欲しい・・
夫婦らしい暮らしがしたい・・
やや子を授かって母親になりたい・・

望むんはいけんのですか ?

寅兄なら、学べ・・と言うハズです」

塾生たちは、深妙な顔で
文の言葉を聞いています。

(この時代の武士の妻が、
こんなことは言うハズがありません)

塾生たちは恩師の松陰のために、
命をかけて松陰の『志』を引き継ぎ
その思いを実現しようとしていたのです。

久坂が文に言いかけましたが、
文は去って行きました。
久坂の思いは、文には届きませんでした。

文は、台所で泣きながら
ひたすら餅をこねています。

 

 

坂本龍馬

文久2年(1862年)の1月。
怪しげな男が、杉家へやって来ます。

文は、不審者かと思い
ほうきで背後から叩きます。

その男は、土佐藩郷士の坂本龍馬で、
同じ土佐藩の武市半平太から久坂玄瑞宛の
手紙を持ってきたのでした。

(北辰一刀流免許皆伝とも
言われている程の腕前の坂本龍馬が
ほうきで簡単に叩かれるは思えませんが・・)

龍馬は、松陰の人物について
文に尋ねてきました。

文は兄・松陰について
家族としての目線で
松陰について思うことを龍馬に伝えました。

やがて文は、松陰の死を
止められなかったことを悔い、泣き出しました。

 

 

フレーヘード

文の言葉を静かに聞いていた龍馬は
むくっと立って、黙って外に出て
背中を向けたまま文に言います。

もし・・もし・・・
おまんの兄上に会えたら・・
聞きたいことがあったの。
フレーヘード』いうて、何じゃ?
兄上が書いた文にあったそうじゃき。
『フレーヘード、声高く叫ばねば』と。
異国の言葉で『自由
つまり、何もんにもとらわれない。
ようわからんけんど、
まっこと、ええもんに思える。
この堅苦っしい国のどこにあったろう。
きっと、はるか海の向こう、
天の向こうにかあらん。

文の方に向きなおして、龍馬はさらに続けます。

おまんはさっき
兄上は消えた。おらんくなった・・
と言うたけんど・・
自由になった。そうは思えんかや?
兄上は今、『フレーヘード』じゃき。

それに、もう・・
おまんらあのもんだけやない。
長州だけのもんでもない。
吉田松陰は、みんなをつなぐ・・
この国の『志』ある者みんなを。

死してなお生き続ける。
それが吉田松陰。まっこと男の中の男。

わしもやるき !
何ものにもとらわれん。
我がなす事は、我のみぞ知る・・・
フレーヘード』じゃき !

龍馬の言葉を聞いて、やっと文の心は吹っ切れました。

 

 

一粒の籾

坂本龍馬は、久坂と存分に話をし、
萩が気に入り、しばらく滞在することになりました。

久坂は、落ちていた一粒の籾を見つけ、文に言います。

文、俺は種にならんと。
一粒の籾として
次の種にならんといけん。

文は、松蔭の言葉を思い出します。

もし同士の中で
私の心を継いでくれる人がいたら、
その実は空ではない。

久坂は続けます。

そうじゃ。先生が残された。
俺たちはここで先生にまかれた種じゃ。

単なる籾殻か、米粒であるかは、
これから何をなすかで決まる。

どうかそれを見定めてくれ。
ようやった・・
いつかそう思うて欲しんじゃ。

これからどねえなるかわからんが、
お前にだけは、ようやった・・と。

俺にはお前しかおらんのやから・・

二人は手を取り合い、久坂は文を抱きしめるのでした。

 


 

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