野山獄での高須久子の支え 涙松から見納める萩

                                         

第16話「最後の食卓」その1 からの続きです。

文は、兄・松陰が江戸送りになる前に
家族のもとに帰してもらいたいと
小田村伊之助や、野山獄の獄吏の福川犀之助に
頼んでみますが叶いません。

そんな意気消沈している文に
高須久子が声を掛けます。

高須久子は、松陰から
糸を刺して欲しいと頼まれた
白布を文に見せます。

その布には、

至誠にして動かざるは未だこれ有らざるなり

と、いう孟子の言葉が松陰で書いてありました。

 


 

高須久子の言葉

a-takasu「あのお方は何も揺らいでいないのです。
獄にあっても、家にあっても・・
あの人の魂は、何も・・」

と、高須久子は言います。

(さすが・・大人の女子です。
落ち着いていて
よくわかってらっしゃる・・)

「そのために身を滅ぼすことがあっても・・ ?」

文の問いかけに久子は答えます。

「誰もあのお方を滅ぼすことなんてできませんよ」

「己の『』を
江戸の他ならぬ御公儀の面前で
思いの丈を述べることができるのです。
あのお方にとって・・
それ以上の幸せがありますか ?

(さすが・・いい女は違う・・と、思わされました。
男心を理解し切ってます)

久子の言葉で、ようやく
心を落ち着けることができた文でした。

 


 

それぞれの別れ

a-katori野山獄に伊之助が江戸行きの説明に来ます。

「お前が『志』に殉じるのは・・もう止めん。
じゃが・・・お前の死に泥を塗られるのは
・・ 我慢ができん !!」

そう泣きながら言う伊之助に
松陰は笑顔で言います。

「伊之助 ・・あとを頼む」

その後、寿の計らいと、獄吏・福川の男気で
思いかげず、松陰は一時帰宅することができます。

家に帰り、杉家の親子兄弟で
泥だらけになって野良仕事をします。

畑仕事が終わると、お風呂場で
松陰は、母・滝に背中を流してもらいます。

いつも背中を流す度に
松陰から旅の話を聞かされていた
母・滝は、今度は、江戸の話を聞きたい・・
と言い、松陰は、必ず聞かせる・・と
涙をこらえながら約束します。

 

 

文との別れ

夕暮れに塾に一人でいる松陰に文は言います。

「風呂の焚き口の横に草鞋と傘があります。
・・それに路銀も・・」

逃げるのではなく生きて欲しい・・
と、必死に訴える妹に松陰は言います。

「私はどこにも行かん。
・・・このボタオを連れて江戸へ行く」abotao001

「文・・・私は死なん・・
あるだけの私と、魂を持って
井伊大老と向き合い、
必ず御公儀を説き伏せ、
そうして必ず、再びへ戻って来る
・・・約束する」

松陰先生にもう一度出逢って頂く本が
見つかった・・と、そこへ
タイミングを見計らって、
久坂が入って来ます。

学が人たる所以を学ぶなり

という松下村塾を興す時に
松陰が最初に記した本でした。

これからもずっと
この教えを、文と二人で伝えて行くと
久坂は松陰に誓います。

その後、松陰は、塾生たちに
最後の講義をします。

 

 

高須久子の支え

a044278野山獄に戻った松陰に高須久子は、
白布に刺繍した手拭いを渡します。

「大丈夫じゃろうか ?
・・私は・・私でいられるじゃろうか ?
最期のその時まで・・見苦しゅうなく・・」

久子からもらった手拭いを
眺めながら松陰は
久子に、不安な胸の内を呟きます。

「吉田様・・何も怖くありません
人とは・・これでございます」

そう言って、久子は松陰の手を握り、
さらに続けます。

「寂しさも、慰めも・・哀しみも、喜びも
ただこれさえ覚えておられれば・・」

 

 

涙松からの萩の景色

安政6年(1859)5月25日
a-hagi松陰がを発つ日は、雨となりました。

野山獄へは、久坂がただ一人
見送りに来ていました。

途中で、護送人が涙松で駕籠を止めます。

「先生、涙松です。
ここで萩は見納めとなります」

駕籠から出ることを許された松陰は
峠の際まで進み出ます。

あいにく眼下は曇っていて、
何も見えませんでした。

けれども、松陰には、
陽光に輝く萩の町と、
あたたかい杉家の家族の様子までもが
はっきりと見えるのでした。

 


 

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