江戸から久坂玄瑞が無事に戻り
文は安堵します。
兄・吉田松陰の心を
元に戻す本があるはずだと
文は久坂に言い、
松陰の書物の中から
そんな本を二人で探します。
松陰の存在は、文にとって
「標 (しるべ) 」で、
道を照らすかけがえのない灯りでした。
そんな心の拠り所を
見失いつつある文は狼狽えていました。
(「最後の晩餐」みたいなタイトルが気になります)
江戸からの召喚状
そんな中、松陰の江戸への召喚状が
長井雅楽の手によって
萩に届けられます。
けれども、幕府がどれくらいのことを
掴んでいるかは一向にわかりません。
江戸で攘夷論者の梅田雲浜への詮議が
日増しに厳しさが増す中
松陰の名が出た可能性も考えられます。
もし、老中暗殺計画が露見すれば、
松陰の死罪は確定となります。
藩に疑いが及ばぬよう
長井雅楽は、早々に松陰を
江戸に送ろうと考えてます。
杉家の覚悟
「江戸送りの段、謹んで承りました。
お知らせありがとうあんした。」
姿は見えずとも香る花の匂いの中
松陰は、覚悟を決めた面持ちで
梅太郎に深々と頭をさげます。
そして、その晩、梅太郎が、
杉家の家族に報告します。
「兄上にはもっと・・・
大勢の方の明かりとなって
もっと、もっと生きてもらわんと !」
兄を助けようと動き回ろうとする文を
父・百合之助は諫めます。
「お前の叫びごときで揺らぐ兄ではない。
寅次郎はとうに覚悟を決めておる」
たとえ松陰を亡くしたとしても
家族は生きてゆかなければならない
と、百合之助は文を諭します。
吉田松陰の肖像画
今日に伝わる吉田松陰の肖像画は
この時に描かれたものと言われています。
久坂の呼びかけにより、
野山獄の松陰のもとに
萩に残る塾生が再び集まりました。
松陰は、塾生たちに別れを告げます。
「死を求めもせず、死を辞しもせず。
獄にあっては獄で、獄を出たら出たで
命のある限り、
できるだけのことをするつもりじゃ !」
亀太郎は、描き終えた松陰の肖像画を
杉家に届け、家族は大喜びです。
文と二人きりになった時
亀太郎は、松陰の眼が
「このままじゃ終わらん」
という抗う眼をしていた・・
という話を文にします。
草莽崛起
その夜、富永有鄰が
野山獄内に「もののけ」のように現れて
江戸で何をするつもりなのか・・
松陰に尋ねます。
松陰は、幕府の者達を前に直に
自分の思うところの全てをぶつける時が、
ついに来たことを告げます。
ナポレオンを呼び起こし
フレーヘード(自由)を唱えて
立ち上がるべきじゃと・・
何モノにも縛られん
自由な者たち・・在野の者たち
すなわち、草莽(市民)こそが、
この国にとっての真の武士(もののふ)
世の中を変えることのできる
ただ一つの力なんです !
忠義を尽くす道に、
もはや身分など要らん。
天朝も要らん。幕府も要らん。藩も要らん。
草莽崛起(そうもうくっき) !!
この国を守ることができるのは
草莽だけじゃ
今や誰も従う者がいない松陰に
富永は叫びます。
「光を見せろ !!」
「お前の言葉で生きるモノを見せろ !!」
富永は、そう言い残し
疾風のように消えて行きました。
(富永有鄰・・・仙人か !?)
第16話「最後の食卓」その2 へと続く。